物忘れ外来 (認知症外来)

物忘れ外来 (認知症外来)

日本の高齢化現象は世界で類を見ないスピードで進み、それに伴って認知症の数も急激に増加しています。作家有吉佐和子がセンセーショナルな話題作「恍惚の人」を発表した昭和46年(1972年)、65歳以上の高齢化率はわずか7%でしたが、平成22年(2010年)には23%、平成2035年には30%を越えるとされています。認知症の発症率は85歳以上では4人に1人といわれていますので、全国では近い将来400万人を越えると予想されています。認知症は今の日本では特殊な病気ではなく、普通にみられるポピュラーな病気になったのです。

認知症はもちろん「病気」には違いありませんが、現実には患者さんと家族を大きな渦に巻き込んでゆく「重大な社会問題」でもあります。御家族が「何かおかしい」と気づいて専門医を受診するまで最低でも1年、通常は2年あまりかかっているという統計があります。現在は認知症に有効な薬も多く開発されていますので、進行する前に1日でも早く受診させ、適切な治療を受けさせてあげてください。(福岡市医師会認知症サポート医)


物忘れ・認知症 Q&A

認知症にはどのような種類があるのですか。
最も有名で頻度の高い認知症はアルツハイマー型認知症です。他には脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などいろいろな種類があります。物忘れ外来ではそれらを鑑別し、それぞれにふさわしい治療を行います。
診断はどのようにして行うのですか。
長谷川式簡易認知症テストやMMSE、時計描写テストなど記憶力や脳の機能を判断する簡単なテストを行います。ただし、プライドの高い方ではそれを不快に思う方や非協力的な方もおられますので注意が必要です。テストが難しいと判断される場合は、私たち認知症診断の専門家がその方にふさわしい質問や会話を通じて診断することになります。アルツハイマー型認知症の場合はその特有な雰囲気や応対も参考になります。
また、CTやMRIなどの画像診断も有用です。ただしそれだけで診断する事はできません。認知症は臨床像全体をみて判断すべき病気なのです。

物忘れ(認知症)診断チェックシートはこちら

アルツハイマー型認知症の原因は分かっていますか。
脳細胞にアミロイドという物質が貯留して脳の機能を低下させることは分かっていますが、なぜそういうことが起こるのか、どうすれば予防できるかなど根本的な事はわかっていません。世界中で数多くの研究が行われていますので徐々に解明されると思います。
アルツハイマー型認知症の特徴を教えてください。
中核症状」というアルツハイマーの方に共通して出る症状は、最近の出来事や自分の言ったことなどをすぐ忘れてしまう(記銘力障害、短期記憶障害)、話がかみあわなくなる、着替えなどの日常生活に支障が出る、リモコンや調理器具や電化製品などを使えなくなる、道に迷う、買い物で同じものを買ってきて冷蔵庫に同じものが並んでいる、料理が下手になる、などです。

アルツハイマー型認知症の中核症状

アルツハイマー型認知症の中核症状

進行してきますと「周辺症状(行動・心理症状)」が出てきます。これは人によって出たり出なかったりします。最も多いのが妄想、特に物盗られ妄想です。他には不眠、幻覚、怒りやすくなる、興奮しやすくなる、うつ状態になる、暴言、介護への抵抗など様々な症状が出てきます。


アルツハイマー型認知症の周辺症状

アルツハイマー型認知症の周辺症状

治療薬はありますか。
根本的な治療薬はありません。けれどもアルツハイマー患者の脳では神経細胞から神経細胞に情報を伝えるアセチルコリンという大切な物質が減少していることが分かっていますので現在それを増やす治療が行われており、進行を遅らせるのに役立っています。現在4種類のお薬がありますのでそれらを症状に応じて使用します。意欲の低下したタイプや興奮しやすいタイプなど認知症には様々な特徴がありますので、個々の症状に応じて薬を使い分けることが重要なのです。薬を飲むことが困難になっている方にはパップ剤も開発されています。
予防法はありますか。
気をつけるべきことは以下のような事です。日常生活の参考にしてください。

【健脳作戦】認知症にならない脳を作ろう

認知症発症は生活習慣と深い関係

生活習慣病が認知症の引き金になる

糖尿病、高血圧、肥満症、喫煙者、アルコール多飲者は認知症になりやすい事が多くの研究で証明されています。


有酸素運動が予防に有効

ウオーキング、ジョギング、水泳、水中歩行、テニス、卓球などなど

ひとくち解説

アルツハイマー型認知症は脳の細胞にベータアミロイドという物質が蓄積しておこります。運動はこの物質を分解する酵素を増やす事が知られています。


予防に効果的と言われている食べ物

ビタミンCを多く含む イチゴ、ピーマン、レモン、レバー
ビタミンEを多く含む カボチャ、サツマイモ、ニラ、玄米、アボカド
ベータカロチンを多く含む 青ねぎ、アスパラ、ニンジン、オクラ
魚類 アジ、秋刀魚、サバ、ハマチなど

ひとくち解説

これらの食物はベータアミロイドをできにくくする働きがあります。青魚を全く食べない人とよく食べる人では認知症の発症率が5倍違うと言われています。バランスの良い食生活が大切です。


頭を使い、人と交わり、興味を持つ生活が認知症を予防する

  1. 計画力を鍛える(新しい段取りを考え、実行する)。
    旅行の計画を練る・新しい料理を考案する・パソコン・マージャン・囲碁・将棋・短歌俳句・合唱・楽器などなど
  2. 記憶力を鍛える(体験を記憶して思い出す)。
    昨日の事を日記に書いてみる・カラオケは歌詞を見ないで歌う・レシートを見ないで家計簿をつけてみる
  3. 情感を豊かな生活を。
    面白い、楽しい、感激した!という、心を揺り動かされる多くの体験をすることが、認知症を予防します。

認知症を理解して介護するための法則と原則

認知症患者の介護が難しいのは、一般の方にはその症状を理解しにくいからです。常識では理解できない症状に振り回されてしまうのです。認知症の特徴を理解しておくとうまく対応できるようになります。その特徴をまとめたものが、7大法則1原則です。

7大法則

第1法則 記憶障害に関する法則

記銘力低下 話したこと、聞いたこと、見たこと、行ったことを直後に忘れてしまう。
毎回忘れるので同じ行動、同じ発言をくりかえす。
全体記憶の障害 体験したことそのものを丸ごと忘れてしまう。
記憶の逆行性喪失 現在から過去にさかのぼって忘れていく。
その結果、まだ現役で働いているなど、昔の世界に戻っていることがある。

第2法則 自己有利の法則

自分にとって不利なことは認めない。明らかに間違っている事でも無理に認めさせようとすると反発する。


第3法則 感情残像の法則

言ったり、聞いたり、行ったところなどはすぐ忘れるが、傷つけられたプライドや不快な感情は残像の様に残る。理性から感情の世界へ移動しているため、不快と感じた場合、怒りを表現しやすくなっている。

対策

叱責する、荒い言葉で注意する、焦らせる、などの行為は症状を悪化させるので絶対禁物。ほめる、感謝する、共感する、事実でなくても認めてやることが重要。


第4法則 手間回避と「とりつくろい」の法則

めんどくさい事、手間のかかる事は行わない。必ずなんらかの理由づけや言い訳をして回避する(とりつくろい現象)。

対策

本人がめんどくさいと感じる物事の段取りを介護者があらかじめ全て行った後に誘導する。


第5法則 症状の出現強度に関する法則

認知症の症状は近くで生活している者に対して強く出る。従って他人にはわかりにくい。「物盗られ妄想」も最も近くで世話をする人に対して向けられるため感情のもつれに発展しやすい。


第6法則 まだら症状の法則

正常な部分と認知症として理解すべき部分が混在している。これは病期に関わらず全病期を通じて見られるため、介護者をとまどわせることになる。


第7法則 こだわりの法則

一つのことにいつまでもこだわり続ける。それが無意味である事を説得したり否定するとこだわりを強める。逆にかたくなな態度をとることが多い。

対策

説得せず認めてやり、そのままにして聞いておく。


1原則

介護に関する原則

「認知症の人が形成している世界」を理解するように努め、大切にする。
その世界と現実とのギャップをなるべく感じさせないように接する。