不眠症の脳科学(1) 脳が眠くなるのは起床16時間後

ストレス社会に生きている私たちですが、睡眠中だけはストレスから解放されています。ベッドメーカーの宣伝ではありませんが、人生の三分の一はふとんの中で過ごしているともいえるわけですから質の良い睡眠を取ることはとても大切です。睡眠学の専門家、内村尚直先生の著書等の学術書を参考に脳科学から睡眠を考えてみたいと思います。

脳の中には生体時計がありますが、この時計は地球の自転24時間より長い約25時間の周期で動いていますので人間はこれを微調整しながら生きています。この微調整に最も強い力を発揮するものは「朝の光」です。この光で私たちは25時間を24時間にリセットしているのです。さらには胃や腸の中にも時計があって、朝決まった時間に食べ物が消化管を通過する刺激によっても微調整されています。朝の光と朝食は生体リズムを整えるために非常に大切だということがわかります。

他に生体リズムを整えるために必要な要素は、人との接触や仕事などの社会的リズム、適度な運動、夜は暗く静かな所で過ごすといった環境のリズムです。運動する時間帯も大切で、昼間の運動はいいのですが夜の運動は不眠症の原因になります。トレーニングジムで深夜に運動をすることはダイエットには良さそうですが睡眠にとっては良くない習慣です。また明るい照明は眠気を妨げます。パソコン、スマホの使用や夜にコンビニに長く滞在することは不眠の原因になると言われていますので高校生は気をつけないといけません。

不眠の訴えで受診される患者さんは少なくありませんが、いったい人は何時間寝れば大丈夫なのでしょうか。睡眠時間と死亡率を調べた研究では6.5時間から7.5時間が一番健康で長生きできるという結果が出ているようです。けれどもこれは年齢で変わってきます。8時間も眠れるのは15歳まで。25歳で平均7時間、45歳で6時間半、65歳を越えたら6時間しか眠れません。それで十分になってきます。人は年相応にしか眠れないようにできているのです。

不眠治療の専門家は起床時刻からの時間を重視しています。人間の脳は起床して目に光が入ってから16時間たつと眠たくなるようにできています。睡眠に向かわせる物質、脳内メラトニンの分泌がその頃に増加してくるからです。ある時刻に寝ようと思ったらその16時間前に起きる必要があります。たとえば日曜の朝ついつい10時まで寝てしまうと16時間後の翌日午前2時にならないと眠くならないので、月曜日は間違いなく睡眠不足です。日曜日、いつも通り朝7時に起きると夜11時には眠気がやってきますので月曜はすがすがしい目覚めになります。これが脳科学的な睡眠の考え方です。