ぼーっとして反応がない「高齢者てんかん」

「てんかん」というと子供に多い病気というイメージがあります。けれども最近のてんかん年間発症率は高齢者と小児でほぼ同数になっています。年を取ると大脳の表面(大脳皮質)が徐々に老化して障害され、神経細胞が過剰に興奮しやすくなります。原因となる病気は脳血管障害、認知症、外傷などですが、原因がわからないものも三分の一くらいあります。


高齢発症のてんかんの特徴

1.側頭葉てんかん(意識消失発作)

これは、ひきつけを起こしたり、ばたっと倒れたりしないてんかんで、高齢者に多いタイプのてんかん発作です。「突然動作が停止する」、「呼びかけてもぼーっとして無反応で一点を凝視する」、「意味もなく口をもぐもぐさせたり、周りの物を手でまさぐるような動作をする(自動症)」などの症状が出現します。このような発作は1,2分で元に戻りますが、もうろう状態が数十分続き、その間の記憶が抜け落ちます。そのため自分でも発作に気づかず、まだらに記憶が抜けたり、つじつまの合わない会話をするため、認知症と間違えられてご家族と受診されることもあります。過去にも同じ様なことが何度かあったという場合は診断がつけやすくなります。これらの症状は抗てんかん剤の内服で症状を抑えることができます。

2.アルツハイマー型認知症とてんかん

アルツハイマー型認知症のてんかん発症率は正常高齢者の2倍から6倍です。若年発症のアルツハイマーや認知機能障害の程度が重症な人ほどてんかんの頻度が高い事もわかっています。これは神経の変性が強いためと考えられています。またてんかんを起こす認知症の方は、物忘れの進行が早い事もわかっていますので、認知症とてんかんの両方を持っている人には抗てんかん剤を積極的に使い、完全な発作予防を目指しています。

3.脳卒中とてんかん

脳卒中(脳血管障害)のあとにてんかん発作を起こすことがあります。脳卒中後1週間以内におこすものを「早期発作」と呼びますが、重要なのはその後に起こる「遅発発作」で、これは長期間繰り返す傾向があります。脳卒中後10年間に発作が一度でも起これば「遅発発作」として内服薬による治療を開始するよう国際てんかん連盟は推奨しています。

四肢や全身のけいれんがあれば診断は容易ですが、先に述べましたように意識がもうろうとする発作、まだらな記憶障害や自動症も多く、十分な問診をしなければ診断が難しい事もあります。てんかんを診断する最も重要なツールは問診です。てんかんは認知症外来を行う上でも忘れてはならない病態です。

治療の面でも最近は次々と新しい抗てんかん剤が開発されていますので、一種類のお薬でコントロールがうまくいかない方は、薬をさらに加えたり、変更する事で大変良い結果が得られるようになっています。てんかん治療も昔と比べると格段に進歩しています。