高齢者の「静かなてんかん発作」―最近のケースからー

高齢者の「静かなてんかん発作」―最近のケースからー

高齢者のてんかんは口から泡を吹いてぶっ倒れるような派手なてんかんではありません。急にぼーっとして反応が薄くなり動作が減ったり止まったり奇妙な動きをしたりします。数分で戻るのですが完全に回復するまでの数時間、寝ぼけているような感じになります。これが「静かな発作」です。その間、話しかけてもまともな返答がなくとんちんかんな受け答えをするため、家族が認知症と勘違いしたり、主治医でさえ区別が難しいことがあるのです。当院での症例を紹介します。年齢、職業は変えています。

79歳の男性。75歳まで電気屋を自営していたが、引退後は家にとじこもり気味になっていた。家族がこのままだと認知症になると心配していたところ、77歳の頃、話しかけても反応が鈍く、会話がトンチンカンになり、昨日話したことを覚えていない事が増えてきた。呼びかけても返事がなかったりこたつでテレビを見ているのに時々身体をゆらゆらさせてちゃんと見ていないことも増えてきた。大事な話を覚えていないのは難聴のせいで、返事をしないのはもともと無口なので理解はしているが返事が面倒なだけだろうと思っていた。しかしそういう状況が徐々に増えたので認知症が心配になってかかりつけ医を受診したところ、アルツハイマー型認知症と診断され投薬が開始された。それから2年後歯磨き中に意識を消失して倒れ頭部打撲を来たしたため、当院を受診されました。

この2年間のお話を詳しく伺ったところ、この方は高齢者てんかんを自宅で繰り返し起こしていたと考えられました。意識消失発作の場合はわかりやすいのですが、「静かな発作」をくり返すケースは発見しにくいのです。意識がしっかりしている時と発作を起こしてぼーっとしている時とでは本来はかなり違うはずなのですが、この方はこたつに入って黙ってテレビを見るような生活習慣で、無口で難聴。発作がわかりにくく、発作後の寝ぼけ状態も眠たくてぼんやりしているんだろうと家族が判断してきたのです。高齢者てんかんはくつろいでいる時に起こりやすく、身体がゆらゆらしていたのは「自動症」という特徴的な症状なのですが、かかりつけ医も家族からの問診で認知症と判断した可能性があります。

今回、意識消失発作を起こしたために、問診と脳波で確定診断を行い、正しい診断を導くことができました。高齢者のてんかんはこれからさらに増えると予想されますので家族も医師も注意が必要です。最近は治療効果が高く安全な抗てんかん剤薬がたくさん出ていますので、この方もふさわしい薬を選択して内服を続けた結果てんかん発作は消失し、とんちんかんな会話やボーっとする症状も消失させることができました。

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