頭部打撲による「外傷性髄液漏」とは

頭部打撲による「外傷性髄液漏」とは

髄液漏」とは、交通事故のような非常に激しい頭部打撲により頭蓋底の骨折をきたし、脳を包んでいる硬膜が破れ、髄液が体外に流出してしまう重篤な状態です。最も多いのは鼻から漏れる「髄液鼻漏」で、透明なさらさらとした液がぽたぽたと鼻から漏れてきます。髄液漏が少しでも疑われた場合、ただちに緊急入院となることは言うまでもありません。

髄液漏は入院を要するような重篤な頭部外傷の1%から2%に見られ、原因となる骨折は前頭蓋底骨折。つまり前頭葉を包んでいる頭蓋骨の底の部分が骨折して起こることが多く、いかに重症の外傷かがわかります。前頭蓋底には匂いの神経、嗅神経が走っていますのでこの骨折により嗅覚が消失してしまうこともあります。

鼻から出てくる液が髄液かどうかはどのようにして判別するのでしょうか。髄液には糖が含まれていますので漏出液の糖分チェックをする事が外来でできる最も簡易的な方法です。ただし涙にも少量ながら糖分が含まれているため、最近では免疫学的な詳細な検査も可能になっています。また起きあがったり、うつむいたり、腹圧を加えたりする操作で流出量が増加するようならば髄液漏の可能性が高まります。

さらさらとした透明な水様性鼻汁で鑑別すべきはアレルギー性鼻炎です。しかしアレルギー性鼻炎では体位に関係なく流出しますし、季節的な変化があり、また鼻汁と同時に結膜充血など他の症状も出ることが区別のポイントになります。

ビール瓶をさかさまにして液体が流れ落ちると、逆にポコポコと空気が入ってきます。そのような原理で、髄液漏を起こすとCT検査で脳内に空気が侵入している状態が観察されます。脳内は無菌ですので髄液漏がおこるとその漏孔から細菌が入り髄膜炎を来たす可能性が高く、危険な状態といえます。髄液は1日に500ccも産出されますので、小さな漏孔でも閉じるのには時間がかかります。そのため髄液漏が疑われた時はベッド上で数週間の安静が必要です。自然治癒しない場合は外科的に孔をふさぐ手術を行います。

「髄液漏疑い」。

診断書に記載するには少し覚悟が必要な診断名です。

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