「アルコール依存症」と「うつ病」の危険な関係

「アルコール依存症」と「うつ病」の危険な関係

アルコールとうつ病はお互いを誘発しやすい危ない関係にあります。アルコール依存症がうつ病を併発する率はそうでない人の4倍と言われています。長く大量飲酒を続けることでうつ病を発症するケース。逆にうつ状態の不安や不眠を解消しようとしてアルコール依存になっていくケース。さらには断酒したときの離脱症状としてうつが現われる事もあります。

この両者が切っても切れない関係だということは私たちも経験的に知っています。楽しいお酒はいいのですが、つらい時に一人で飲む悲しい酒は孤独感がつのり、気持ちは際限なく落ち込んでいきます。仕事の失敗や人間関係の不調が自分のせいだと考えるようになりうつ状態に陥っていきます。一方、うつ病の人は抑うつ気分を紛らわせるためにお酒を飲むので酒量が徐々に増える傾向があり、最悪の場合、アルコールによる衝動性で自殺に至ることもあるのです。

アルコール依存症とは

依存症には物質依存プロセス依存がありますが、ギャンブルはプロセス依存、アルコールは物質依存の代表です。アルコール依存の人は自分が依存症であることを決して認めません。しかし実際には時間や場所に関係なく「酒を飲みたい」という飲酒渇望状態にあります。一旦飲み始めると抑制が効かず、飲む時刻、時間、量のすべてがコントロール不能となります。飲めない時には手のふるえ、発汗、動悸、吐気などの禁断症状に苦しめられるため、アルコールを手に入れるためには何でもやりかねない状態となります。長期的にはうつ病、不眠症、不安、イライラ感などが常時現われるようになり、その結果として家庭内暴力、児童虐待、無断欠勤、解雇などの大きな問題を生み、社会的損失を引き起こすのは大変残念なことです。

うつ病からアルコール依存症へ

うつ病には内因的うつ病と心因的うつ病がありますが、精神的な悩み、責任感の強さからくるストレス、喪失体験など原因がはっきりしているものは心因的うつ病です。気分の落ち込み、意欲の低下、不安感、全てを悪い方に考える、疲れやすい、自分がダメな人間と考えるなどの症状が進んでいき、それを忘れるために飲酒量が増えアルコールに依存していきます。その結果さらに心身が衰弱し、生きる意欲や社会人としての正しい判断力が失われていくのです。

アルコール依存症の治療

専門の施設では多くの治療が行なわれていますが、基本となるのは精神療法によるリハビリ療法です。時間をかけて本人に飲酒問題の現実を認識させ、断酒の決断に導く方法です。文章にすれば簡単ですが、実に大変な道のりだと思います。退院したあとすぐにアルコールに手が出ないように自助グループなどの参加や嫌酒薬などを使う治療も行なわれます。

うつ病の治療

うつ治療の三本柱は、#1休養 #2くすり #3精神療法ですが、まずは仕事を休ませて薬物治療を行います。うつ病の方はセロトニンやノルアドレナリンなどの脳内物質のバランスが悪くなっているのでそれを抗うつ剤で是正するのです。アルコールはうつ剤治療の障害となりますので禁酒が絶対条件になります。

アルコール依存症とうつ病はどちらかを発症するともう一方に延焼が及んでいく危険な関係にあります。そして両者をこじらせると治療は複雑で難しくなります。せめてどちらかを発症した初期の時点で近くにいる人たちが発見してあげて、早く治療に向わせてあげることができたらと思います。

関連記事

  1. 「うつ病」と「うつ状態」どう違う?

    「うつ病」と「うつ状態」どう違う?

  2. 脳卒中とうつ病

    脳卒中とうつ病

  3. 新型うつ病の謎

    新型うつ病の謎

ピックアップ記事

  1. 片頭痛にめまいが合併する「前庭性片頭痛」
  2. 新型コロナウイルス(COVID19)治療薬の現況
最近の記事 おすすめ記事
  1. 新型コロナ感染で残る神経系の後遺症
  2. アルツハイマー型認知症のとりつくろい現象
  3. 「うつ病」と「うつ状態」どう違う?
  4. 幼児、小児の頭部打撲とCT検査
  1. 頭部打撲による「外傷性髄液漏」とは
  2. 新型コロナウイルス感染の正しい怖がり方
  3. 子供(乳幼児)の頭部打撲:ぶよぶよたんこぶの対処法
  4. 高齢者の頭部打撲でおこる「慢性硬膜下血腫」について
  5. 幼児、小児の頭部打撲とCT検査

記事一覧

  1. スポーツ顔面外傷の注意点
  2. 子供のスポーツと脳震盪(のうしんとう)
  3. 「子供への虐待による外傷」の特徴を探る
  4. 「運転したい」高齢者VS 「やめてほしい」家族
  5. 子供の「ぶよぶよたんこぶ」と「固いたんこぶ」いつ治る?
PAGE TOP