抗認知症薬の副作用と使い分け

抗認知症薬の副作用と使い分け

アルツハイマー型認知症を治す薬はありませんので、今使われている薬はその進行を遅らせるために使用されているものです。その「進行」とは何でしょうか。物忘れがひどくなることでしょうか。それも確かにあるでしょう。でも実際には、物忘れがひどくなって困っているご家族はそれほど多くはありません。困っているのは、いわゆる周辺症状といわれる諸症状です。有名な周辺症状は、物盗られ妄想、被害妄想、嫉妬妄想のような妄想症状、暴言、易怒性のような興奮しやすさ、昼間ずっと寝ていて起きて来ないという昼夜逆転や意欲喪失などなどです。これらの周辺症状をBPSDと呼びますがこれらの症状の悪化が患者さんを苦しめ、ご家族の介護を困難にしているのです。

ですから、抗認知症薬を使って物忘れの進行が抑えられたとしても副作用などでBPSDが進行してしまえばその治療はうまくいっていないことになります。すぐに軌道修正する必要があります。家族、スタッフの対応や医師の処方などどこかに問題があるのです。私の外来では認知症と診断しても抗認知症薬を必ず使うのではなく、患者さんやご家族にとって今何が一番問題となっているかを考えて処方を決めています。副作用が出た場合は直ちに中止し、次の手段を考えることになります。

ここでは代表的な三種類の抗認知症薬の特徴を紹介します。

1.アリセプト(ドネペジル)

一番早く開発された抗認知症薬で、神経伝達物質のアセチルコリンを賦活化させる薬剤です。これと類似した機序の薬にはレミニール(ガランタミン)、リバスタッチ、イクセロンパッチ(リバスチグミン)などがあります。認知機能の改善、日常生活動作の改善、行動障害の改善などがあるとされています。けれども認知症は進行性の病気ですので、一時的に効果があっても症状はゆっくりと進んでいきます。ドネペジルは感情や行動や言動を活発化させる薬剤なので、アルツハイマー型認知症の患者さんの中でもおとなしいタイプ、無関心になったり意欲が落ちているタイプに有効です。服用後元気になった、明るくなったという効果を実感できることもよくあります。逆に活発すぎるタイプに使うと攻撃性や興奮性、易怒性が出現して介護が困難になることがあります。

また一般的な副作用として吐気、胃部不快感、食欲不振などの消化器症状が出ることもあります。この副作用は栄養状態の維持にかかわる大問題ですので、このような症状が出たら無理に続けずに他の薬への変更を考えます。

2.メマリー(メマンチン)

メマンチンはドネペジルとは異なる作用の薬で、易怒性や易興奮性、暴言、介護への抵抗などが見られるケースに適応となる薬です。メマリーを使用すると行動や感情が安定してくることが多く、強い鎮静剤などを使わずに済むこともよくあります。活発すぎるBPSDの改善効果も期待できるので、軽い鎮静作用のある抗認知症薬という位置付けで使用しています。この薬は量を増やしていくとどうしてもふらつきやめまい感が出てきます。その場合は服用時間を変えて夕食後にする、少量で様子をみて徐々に増やすなどの工夫が必要です。めまいやふらつきは転倒、外傷という大きな問題を引き起こしますので注意して経過を見なければいけないお薬です。

3.レミニール(ガランタミン)

脳内アセチルコリンを活性化する薬ですが、ドーパミン、セロトニン、GABAなどそれ以外の神経伝達物資にも影響を与えるため、認知症の周辺症状にも効果が期待できる薬です。易興奮性などの副作用はドネペジルよりも出にくい印象があります。抑うつ症状、意欲低下などの陰性のBPSDを改善させるだけでなく、易興奮性、易刺激性を抑える効果もみられます。海外では脳血管性認知症の適応もとれていますので合併しているケースでは良い適応になります。胃の不快感、吐気などの消化器系副作用はやはりみられることがありますので、その際は他剤への変更を考慮します。この薬は一日2回の服用が必要ですので、家族の見守りなど服用の環境が整っていることが肝要になります。

サプリメントとは?見逃せない副作用

最近、日本もサプリメント王国となり、国内市場は5000億円と言われています。しかし、うたい文句の鵜呑みにしてむしろ身体に害を及ぼすケースが増えているのも事実です。東京都が医療機関に対して行ったアンケートでは、「サプリメントが原因で体調を崩したと思われる患者を診た事があるか。」という質問に対し、2割の医師がイエスと答えています。科学的根拠のないサプリメントによる健康被害者は確実に増えているのが実情なのです。

人間の身体は五大栄養素によって維持されています。ですから基本であるその栄養素が不十分なままで、肌にいいといわれるサプリメントを摂取しても無意味です。毎日の有酸素運動によってカロリーを燃焼させなければダイエットも成功するはずはありません。摂取するだけで健康になったりダイエットが成功する物質など存在しないのです。

食事や運動など生活の基本を整えた上で、どうしても不足していると思われる成分だけを適量摂取する。そういう賢いサプリメントとの付き合い方が求められているのです。そこで人気サプリメントの注意点をまとめてみました。


サプリメントの種々の害から身を守る参考にしてください。

ビタミン

2001年に厚生労働省がビタミン12種類を「栄養機能食品」に指定。厚生労働省の摂取量基準を守ればまず心配はない。摂取しすぎても多くのビタミンは水溶性であるため、尿と共に体外に排出される。ただしビタミンA、D, Eは脂溶性ビタミンなので過剰成分が体内に残ってしまうので注意が必要。

ビタミンEに関しては埼玉県生活科学センターの調査で、1日当たりの必要量を上回るサプリメント商品が多く、過剰摂取に注意を呼びかけている。米国心臓学会はビタミンEの過剰摂取が心臓による死亡率を高めていると報告している。

ビタミンCに関しては過剰摂取によって微量元素の銅の吸収を妨げたり、カルシウムと結びついて結石ができやすくなるといわれる。
体内でビタミンAとなるベータカロチンは、がん予防効果が強調されてきたが、過剰摂取により肺がんの発病リスクを高めることがわかっている。

ビタミンB2は過剰摂取によりうつ病を引き起こすというデータもある。

ミネラル

現代人に不足している栄養素で、食事では積極的に摂取する方が良い。しかしサプリメントによるカルシウムの摂り過ぎには注意が必要。1日4000mg以上を長期間摂ると、肝機能障害、便秘、結石などの障害をきたす。ミネラルは多すぎても少なすぎても良くない。サプリメントを飲む場合は「栄養機能食品」の表示に定められている摂取量を守る事が大切。

ポリフェノール

フランス人に動脈硬化が少ないのは、赤ワインに含まれるポリフェノールのためであるという説で有名になった物質だが、これも過剰摂取は害をもたらす。

ポリフェノールの一種であるイソフラボンについては食品安全委員会が、妊婦や乳幼児、小児への摂取に関しては安全性が確認されていないので「摂取しないよう」注意表示を行った。イソフラボンは女性ホルモンであるエストロゲンとして作用するため、更年期障害や骨粗鬆症に対する効果があるとされる。しかし、過剰になると体内のホルモンのバランスを破壊し、いわゆる内分泌かく乱(ダイオキシンなどで知られる)を起こすというデータも多数発表されているので注意が必要。

お茶に含まれ、抗酸化作用、血液凝固抑制作用があるカテキンは摂りすぎると鉄の吸収を抑え、貧血を来たす可能性がある。

リコピン、ルテイン、アントシアニンなどは過剰摂取により便秘や吐気を来たす。

アミノ酸、その他

科学的に証明されているアミノ酸の効能は、疲労回復、免疫力アップ、肝機能サポートなどである。従ってアミノ酸自体に脂肪燃焼効果もなくダイエット効果もない。ダイエットのためにはアミノ酸摂取と共に十分な有酸素運動をしなくては効果はない。

アミノ酸入り飲料は糖分が含まれており、過剰摂取によりカロリーオーバーになりやすい。

血栓予防やコレステロール低下で知られるEPADHAも、食事で摂る範囲では積極的に摂取した方がいいが、1日3g以上摂ると、血液凝結能が低下しすぎ、出血を起こしやすくなる。

脳循環改善、心筋梗塞予防効果などがあるとされるイチョウ葉系サプリメントや食品はアレルギー物質であるギンコール酸が含まれており、湿疹や下痢などの健康被害が多く報告されている。

肝機能強化などで用いられているウコンはこれに含まれるクルクミンにより腹痛や頭痛が引き起こされるので過剰摂取には要注意である。

(参考資料・厚生労働省安全部報告事例、国立健康栄養研究所データ)