ボツリヌス治療の適応となる病気について

当院は厚労省から認可を受けたボツリヌス治療認可施設です。ボツリヌス治療は斜頸や脳性まひの下肢痙縮にも行うことができますが、当院では「片側顔面けいれん」と「眼瞼けいれん」の二つの病気に対してのみ治療を行っており、平成24年現在のべ約900施行回数の実績を持っています。この二つの病気は眼の周囲や顔の筋肉が異常に緊張してぴくぴくとけいれんをおこし、生活に支障の出る病気です。

片側顔面けいれん

片側顔面けいれん 片側顔面けいれん

片側顔面けいれん」は神経と血管が接触して起こる病気です。顔の筋肉を動かしている神経を顔面神経と言いますが、その顔面神経が脳の奥深い場所で周囲の血管に圧迫され、その刺激が顔面神経に伝わって顔のけいれんをひき起こすのです。動脈硬化で蛇行した血管が原因になる事が多いため中年以降に発症し、女性に多い病気です。自分の意志とは無関係に眼の周囲、ほお、あごの筋肉がひきつり、特に人と話しをしたり緊張した時に症状が強まるので生活上大変困ります。この病気の根治療法は外科的治療ですが、命に関わる病気ではないので手術を嫌う方も多くおられます。そこでボツリヌス治療が新たな選択肢となっているのです。

眼瞼けいれん

眼瞼けいれん 眼瞼けいれん

眼瞼けいれん」はジストニアという不随意運動の一つで、これは左右両側に起こります。両目の周りの筋肉が勝手にけいれんし、当初はまぶしさや目の乾きを自覚し、徐々に目がしょぼしょぼし、ついにはけいれんで目が開けられなくなります。運転中などに眼が開けられなくなると大変危険です。眼科の先生からのご紹介でお見えになる事が多いこの病気ですが、有効と思われる薬物療法も外科的治療もありませんので、現在はボツリヌス治療だけが唯一の治療法となっているのです。

ボツリヌス治療とは

一般にボツリヌス菌は激しい食中毒をもたらす菌として知られています。この菌から産生される毒素を希釈し、そのごく微量を筋肉に注射すると筋肉がゆるみけいれんが治まることが科学的に証明され、1997年(アメリカでは1989年)医薬品として承認されたのです。もちろん毒性はありません。顔面のけいれんを起こしている筋肉(眼の周囲、ほお、口の周囲など)にツベルクリン用の細い針で注射をします。治療時間は5分から10分程度です。安全性も確立されています。

この治療法の特徴

けれどもこの治療法は根治療法ではなく、対症療法です。効果は2.3日後から現われ、通常3,4カ月間持続します。症状は薬の効果が減弱するに従って再び現われてきますが、再度投与することで同様の効果が得られます。

効果と副作用

この治療の効果は絶大で顔面筋のけいれんを非常によく抑えることができます。患者さんの満足度が非常に高い治療法という事ができます。副作用は主として薬が効き過ぎた場合に起こるもので、まぶたが閉じにくくなる、目が乾いた様に感じる、視力が落ちたように感じる、口角が下がるなどが見られることがありますが、これらの不快な症状は薬の効果が減弱してくると軽減します。同じ量を同じ部位に打っても効き過ぎる方と効き方の弱い方がおられるのです。このような副作用がもしあった場合は必ず報告してください。次回の治療ではそれを参考にして投与量や投与部位を検討し、副作用の出現を抑えます。

治療の費用

ボツリヌス治療は自由診療の美容整形の施設で「しわ取り」「多汗症治療」等の目的で行われていますので、非常に高価なものと感じられていると思います。確かに安いお薬ではありませんが、当院で行っている治療は健康保険の対象ですので3割負担の方で約16000円の自己負担(初診料、再診料を除く)になります。継続して治療すると3,4カ月ごとにその程度の費用がかかると考えておかれるといいでしょう。

治療開始までの道すじ

顔面に異常をきたす病気は、「片側顔面けいれん」や「眼瞼けいれん」だけではありません。
放置していると命に関わる病気もありますし、何も治療しなくても自然治癒する病気もあります。まずはどのような病気かを診断する事から始まります。症状が長引いている場合は自己判断せずに一度受診してください。診察や画像診断を行った上で方針を決定します。ボツリヌス治療の適応と考えられた場合はこの治療法の効果や副作用などについてご説明をし、治療を希望される方には同意書にサインして頂きます。すぐに決められない方は急ぐ必要は何もありませんので、ゆっくりと考えてから再度受診していただければ結構です。
ボツリヌスは特殊な薬剤ですので、治療期日が決定してからグラクソスミスクライン社に発注します。1本の薬を複数の患者さんで分けて使うことが法律で禁止されているため、院内に常備できないのです。そこで治療日を決定し、後日改めて治療に来て頂く事という流れになります。いつでもご相談においでください。

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