家庭血圧を重視する高血圧新ガイドライン2014

私たちの年代の医師が研修医だった頃、内科の教科書には収縮期血圧160以上、拡張期血圧90以上を高血圧とすると記載されていました。今から考えるとずいぶん甘い基準のように感じます。その後多くの研究により成人の降圧目標は135/85、高齢者で140/90となり、その努力の結果国内の脳出血の発症率は激減しました。

2009年のガイドラインがこの4月に改変されました。そのポイントのいくつかを御紹介しましょう。

1.高齢者の高血圧

高血圧が諸悪の根源であることは何も変わらないのですが、高齢者では急に血圧を下げるとかえって体調が悪くなる人がいるなど、高血圧治療は画一的にはいきません。そこで今回の改変では「75歳以上ではまず150/90未満を目標とする。しかし薬の副作用がなく他の病気との関係上差し支えがなければ積極的に140/90未満を目標とする」とされました。また糖尿病を同時に持っている人は130/80未満が理想なのですが、まずは150/90第一目標として設定し、問題がなければ130/80未満を目指す。という風に二段階コントロールになっているのが特徴です。

2.糖尿病を合併した高血圧

上に書きましたように目標値は130/80未満とされました。実はこの基準はアメリカの基準140/80、ヨーロッパの基準140/85よりも厳格になっています。これは日本では脳卒中発症率が海外よりも高い事が反映されたものです。

3.脳血管障害(脳卒中)を合併した高血圧

脳血管障害は種類も多くその時期もさまざまですので降圧目標は複雑です。140/90未満の目標値は変わりませんが、発症後の時間によって超急性期(24時間以内)、急性期(2週間以内)、亜急性期(3,4週間以内)、慢性期(1カ月以後)と以前より細かく分類され、その各期に応じた治療目標、望ましい薬の種類なども示されています。

4.家庭内血圧の大切さ

今回の改定では家庭内血圧を重視しています。「病院と自宅での血圧が異なる場合は家庭血圧を優先する」と明記されました。また血圧測定を朝夜二回行う事は今までと同じですが、今回の改変では「朝2回、夜2回測定する方法が推奨される」ことになりました。実際の現場ではすでに2回か3回測定して平均を取るというやり方をしている方は多いですね。その臨床的な意味がきちんと証明され学会が推奨したというのも今回が初めてです。

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糖尿病とアルツハイマー型認知症の深い関係

現在の日本は65歳以上の人口の割合が24%を越え、世界に類を見ないスピードで高齢化が進んでいます。疫学の定義では21%以上を超高齢化社会と呼ぶのだそうです。高齢化に伴い認知症患者も激増し、厚労省研究班のデータではその数は462万人とも言われています。これは65歳以上の15%にものぼり85歳以上になると25%という発症率です。実に大きな社会問題です。

認知症の代表疾患であるアルツハイマー型認知症の危険因子として生活習慣病がありますが、その中で何が一番危険と考えられているかというとそれは糖尿病です。糖尿病およびその予備軍は現在国内に2200万人いるとされており、糖尿病患者が認知症を引き起こす頻度は非糖尿病患者に比べて2倍から4倍高いとされています。日本が世界に誇る臨床疫学調査である九大の久山町研究では「食後血糖値の上昇が顕著な糖尿病患者は特に認知症になりやすい」ことが示されています。

動物実験でも確かめられています。マウス用のプールに作った水迷路のゴールに餌を置き、そこに泳いでたどりつけるよう実験用マウスを繰り返し教育します。この実験を正常マウスと糖尿病マウスで比べながら続けていくと、糖尿病マウスでは若年時から記憶障害、学習障害が出現して次第にうまく行えなくなり、目的を達成できなくなることが証明されているのです。アルツハイマー型認知症は「昔できていた事が徐々にできなくなる病気」ですから、糖尿病と認知症には深い関係がありそうです。

アルツハイマー型認知症では脳細胞にアミロイドベータ蛋白という毒性の強い物質が蓄積して細胞死を引き起こします。この物質は常に代謝分解されているので全てが蓄積するわけではないのですが、糖尿病ではこの代謝が低下しアミロイドベータ蛋白が沈着しやすくなっていると考えられています。また、糖尿病は動脈硬化の原因となり微小血管の循環不全を引き起こして細胞の加齢性変化を促進させることもわかっています。

アルツハイマー型認知症の誘因は多岐にわたりますが明確に証明されている原因はあまり多くありません。その中で糖尿病は科学的に証明された数少ない危険因子の一つなのです。

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