不眠症の脳科学(2) 5分でも有効。正しいお昼寝の作法。

旧ソ連のチェルノブイリ原発事故、アメリカスリーマイル島原発事故、スペースシャトルチャレンジャー号の悲劇的な爆発事故、これらはすべて人間の睡眠不足が原因と考えられています。スキーツアーバスの事故など睡眠不足は人間の集中力や注意力を奪ってしまいます。また睡眠が不足すると肥満、高血圧、糖尿病 脳梗塞、認知症、うつ病も増えてきます。

正常の睡眠をとっている人と比較すると睡眠時間が5時間未満の人は2.5倍糖尿病になりやすい事がわかっています。高血圧でも同様です。最も関係が深いのが肥満症です。睡眠時間が短くなるとグレリンという食欲ホルモンが増え、一方で食欲を抑制するレプチンが減ってきます。そのため一般成人で平均睡眠時間が5時間を切る人は太りやすいことが証明されています。また寝る子は育つと言うように睡眠中は成長ホルモンが分泌されますので、十分睡眠をとっている子は平均より身長が高く、成績も良くなるという研究があります。

人間の睡眠時間のうちで最も深い、質のよい睡眠がとれるのは「午後10時から午前4時くらいまで」です。ですから同じ6時間寝るとしても午前2時に就寝すると深い眠りは最初の2時間にしか現われないのですっきりした目覚めにはなりません。65歳以上の人が10時、11時頃に就寝するとだいたい4時、5時頃には眠りが浅くなってきます。その後床に入っていても最後の1、2時間は深い眠りにはなりません。浅い眠りの中でその夜で一番長い夢を見ます。人は一晩に4、5回の夢を見ていますが、この最後の夢だけを覚えています。

正しいお昼寝の方法です。人間が一番眠たくなる時間は夜中の2時~4時と午後2時~4時の間です。ですから仕事の効率を上げるための正しいお昼寝タイムは「午後1時半から2時の間」ということになります。お昼寝時間は5分~10分。長くて20分。完全に眠ってしまわなくてもいいのです。5分でもアイマスクや耳栓で光や音をシャットアウトして仮眠体制を作ることだけで脳はリフレッシュして午後の仕事の効率が上がります。私自身も5分(できたら10分)昼寝法を実践していますが、その効果は明らかです。このお昼寝作戦は企業や高校、今では中学校でも取り入れられています。お昼寝は午後の集中力、意欲の亢進に役立つだけでなく夜間の睡眠の質を高め、不眠症の対策としても有効なのです。

不眠症の脳科学(1) 脳が眠くなるのは起床16時間後

ストレス社会に生きている私たちですが、睡眠中だけはストレスから解放されています。ベッドメーカーの宣伝ではありませんが、人生の三分の一はふとんの中で過ごしているともいえるわけですから質の良い睡眠を取ることはとても大切です。睡眠学の専門家、内村尚直先生の著書等の学術書を参考に脳科学から睡眠を考えてみたいと思います。

脳の中には生体時計がありますが、この時計は地球の自転24時間より長い約25時間の周期で動いていますので人間はこれを微調整しながら生きています。この微調整に最も強い力を発揮するものは「朝の光」です。この光で私たちは25時間を24時間にリセットしているのです。さらには胃や腸の中にも時計があって、朝決まった時間に食べ物が消化管を通過する刺激によっても微調整されています。朝の光と朝食は生体リズムを整えるために非常に大切だということがわかります。

他に生体リズムを整えるために必要な要素は、人との接触や仕事などの社会的リズム、適度な運動、夜は暗く静かな所で過ごすといった環境のリズムです。運動する時間帯も大切で、昼間の運動はいいのですが夜の運動は不眠症の原因になります。トレーニングジムで深夜に運動をすることはダイエットには良さそうですが睡眠にとっては良くない習慣です。また明るい照明は眠気を妨げます。パソコン、スマホの使用や夜にコンビニに長く滞在することは不眠の原因になると言われていますので高校生は気をつけないといけません。

不眠の訴えで受診される患者さんは少なくありませんが、いったい人は何時間寝れば大丈夫なのでしょうか。睡眠時間と死亡率を調べた研究では6.5時間から7.5時間が一番健康で長生きできるという結果が出ているようです。けれどもこれは年齢で変わってきます。8時間も眠れるのは15歳まで。25歳で平均7時間、45歳で6時間半、65歳を越えたら6時間しか眠れません。それで十分になってきます。人は年相応にしか眠れないようにできているのです。

不眠治療の専門家は起床時刻からの時間を重視しています。人間の脳は起床して目に光が入ってから16時間たつと眠たくなるようにできています。睡眠に向かわせる物質、脳内メラトニンの分泌がその頃に増加してくるからです。ある時刻に寝ようと思ったらその16時間前に起きる必要があります。たとえば日曜の朝ついつい10時まで寝てしまうと16時間後の翌日午前2時にならないと眠くならないので、月曜日は間違いなく睡眠不足です。日曜日、いつも通り朝7時に起きると夜11時には眠気がやってきますので月曜はすがすがしい目覚めになります。これが脳科学的な睡眠の考え方です。