2021年以降発売ラッシュとなっていた新しい機序の片頭痛予防薬がほぼ出揃ってきましたので、頭痛外来の現状をお知らせしたいと思います。
生活に大きな影響を与える片頭痛。その年間経済損失額は280億円と試算されています。片頭痛発作が月に2,3回以上ある方は、その前後数日間の体調不良期間を含めると1週間以上影響を受けている事になります。痛みのある日だけではなく、いつ次の頭痛が起こるかわからない、家庭の行事を決められないなど片頭痛に振り回される日々を送っています。片頭痛は痛み止めだけでなく、予防薬こそが重宝される病気なのです。
これまでの片頭痛予防は、抗てんかん薬(1)、抗うつ剤(2)、β遮断薬(3)、カルシウム拮抗剤(4)等の中で予防効果が認められた薬が保険収載され、いわば拝借利用してきたのですが、最近は片頭痛予防に特化した新薬が次々と上梓され非常に良い効果をあげています。これらの薬のキーワードはCGRPという神経伝達物質です。この神経ペプチドが硬膜、眼窩部、頭部、後頸部等の三叉神経先端から分泌されて血管に結合することが片頭痛の主因であることが分かっており、この結合を阻止する抗体薬の登場で大きな効果が得られるようになってきました。
まず、抗CGRP注射製剤は3種類あり(5),(6),(7)、月に一度オートインジェクターで皮下注をしますが、自宅で自己注射もできる仕様になっています。臨床データ上、3種類の効果はほぼ同等で、ほとんどの症例で片頭痛の頻度や強度が半分以下に改善します。1割近くの人では片頭痛をほぼ感じない生活を手に入れることができます。副作用としてはまれに注射部位の発赤やかゆみがみられる程度で、重篤なものは報告されていません。ただし、この注射製剤の使用は、脳神経外科専門医、神経内科専門医、総合内科専門医、頭痛専門医のいずれかの資格が必要条件となっています。
さらに最近、経口抗CGRP製剤が上梓され処方できるようになりました。これはすべての医師で使用可能です。内服薬ですので月に一度というわけにはいきません。毎日内服するタイプ(9)と一日おきに内服するタイプ(8)との2種類があり、希望に応じて処方しています。内服薬も注射剤と同等の予防効果が得られるので、注射が苦手な方には朗報です。たとえば月経前など片頭痛の出やすい時期にのみ短期で内服することもできます。薬は飲み忘れるから注射がいいと思われる方もいますので、治療の選択肢が広がったのはとても良い事だと思います。
この予防治療のネックになっているのは薬価がやや高いことで、注射1本が3割負担で12000円かかります。内服薬も一か月のトータルで同じくらいの価格になります。いろいろなやり方があると思いますが、私はまず3か月間続けてみて満足する結果が得られたらさらに続けましょうと言っています。現在数十人の方に新しい予防療法を行っていますが、これまで30年の片頭痛治療とは明らかに違う新たな地平を見ていると実感する日々です。
片頭痛予防薬一覧
(1) 抗てんかん薬 デパケン:バルプロ酸
(2) 抗うつ剤 トリプタノール:アミノトリプチリン
(3) β遮断薬 インデラール:プロプラノロール
(4) Ca拮抗薬 ミグシス:ロメリジン
(5) CGRP拮抗薬 エムガルティ:ガルガネズマブ(抗CGRP抗体)
(6) CGRP拮抗薬 アジョビ:フレマネズマブ(抗CGRP抗体)
(7) CGRP拮抗薬 アイモビーク:エレヌマブ(CGRP受容体拮抗薬)
(8) 経口CGRP受容体拮抗薬 ナルティーク:リメゲパント(隔日内服)
(9) 経口CGRP受容体拮抗薬 アクイプタ:アトゲパント(連日内服)




















