脳卒中の予防 (生活習慣病対策)

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脳卒中の予防 (生活習慣病対策)

私たちが最も想像したくない自分の老後、それは「寝たきりの自分」ではないでしょうか。人間の幸福は行動半径に比例するとも言われます。強い足腰で広い行動範囲を保ち、多くの人と快活に交わり、若々しく笑顔で過ごす、そんな理想的な老後の姿を私たちは実現したいものです。その理想に立ちはだかるものは、認知症、骨そしょう症による骨折、そして「脳卒中による麻痺や言語障害などの後遺症」です。当院では脳血管障害の発症を予防する事に力を注いでいます。脳の定期健診や不整脈の有無、頸動脈の動脈硬化の程度を判定し、さらに脳卒中発症の原因とされる高血圧症、高脂血症、糖尿病、肥満症などの生活習慣病に対する指導や治療を行っています。

脳血管病変をまとめて「脳卒中」と言います。卒中とは突然に起こって倒れてしまう病気の事で、出血を起こす病気にはくも膜下出血脳出血。血管が詰まってしまう病気には脳梗塞があります。


くも膜下出血

くも膜下出血の臨床症状

くも膜下出血は脳の重要な血管に脳動脈瘤を持っている人が高血圧やストレスのある環境にさらされて発症する病気で、今までに経験したことのない非常に激しい頭痛で発症します。意識を失うこともあり、三分の一の方は不幸な転帰をとると言われています。


くも膜下出血のCT画像 脳動脈瘤の3DCT画像


脳出血

脳出血のCT画像

脳出血はその原因のほとんどが高血圧で、「高血圧性脳出血」と呼ばれる事の多い病気です。高血圧の予防が何よりも大切です。


脳梗塞

脳梗塞の臨床症状

脳梗塞には色々な種類がありますが、何よりも重症の脳梗塞を起こすのは「心房細動」という不整脈を持っている方に起こる脳梗塞です。

巨人軍の長嶋茂雄氏や、命を落とした小渕総理大臣はこの心房細動が原因で起こった脳梗塞でした。また、脳梗塞の前触れと言われる「一過性脳虚血発作(TIA)」という病気も見逃せません。みなさんは首の横に指をあてると血管の拍動を触れるのがわかると思います。それが「頸動脈」です。心臓から駆出された血液を脳に運ぶ大切な大動脈です。高血圧、高脂血症、糖尿病、肥満、喫煙などで動脈硬化が進むとこの頸動脈の内側にコレステロールや血小板などの塊ができます。その一部がはがれて脳血管に飛んでゆき一過性の脳梗塞を起こすのがこのTIAです。もちろん心房細動からもTIAは引き起こされます。
TIAは脳梗塞の前触れですので、後日、脳梗塞を起こす可能性が高いのです。TIA特有の症状があった時はすぐに専門医を受診し、早急に予防策を取ることが大切です。


脳梗塞の前触れ?「一過性脳虚血発作」について

一過性脳虚血発作とは、「脳の細い血管が一時的に詰まって色々な症状を来たすけれども、しばらくすると症状が消えて元に戻ってしまう」という病気です。元には戻るのですが、この病気は脳梗塞の前触れと考えられていますので、早急に検査や治療が必要です。

脳の中のどの血管が閉塞するかによって症状は異なります。

  • 「一時的に言葉が出なくなりましたが、数時間で話せるようになりました。」
  • 「食事中、突然右手に力が入らなくなり箸を取り落としてしまいましたが、数十分で力が入るようになりました。」
  • 「仕事中に左半身全体が急にしびれてきましたが、しばらく休んでいるとほとんど感じなくなりました」
  • 「片方の目が急に真っ暗になって見えなくなりましたが、数分で戻りました」

などの症状ですが,これらは長くとも24時間以内、ほとんどは数時間から数分以内に回復します。

原因は、高血圧、高脂血症、糖尿病、肥満、喫煙などによって、脳に血液を運ぶ重要な血管に動脈硬化が進行していることです。その結果、血管が狭くなり血流が悪くなったり、血管に付着した血栓の一部がはがれて脳の細い血管まで流れて行き、閉塞するためと考えられています。その血栓がたまたま数時間以内に融解すると、血流が再開し症状が消えてしまうのです。
心房細動などの不整脈がある場合も心臓内の血栓が脳に飛んで同じような症状を来たしやすくなります。

このように、一過性脳虚血発作生活習慣病や心臓病やメタボリック症候群などが原因となっておこる疾患で、本物の脳梗塞の前触れと考えられています。
全身の検査を行い、生活習慣を見直し、半身不随や失語症を引き起こす重症の脳梗塞にならないよう早急な対策をとる必要があります。

治療には、生活習慣病の治療と共に、血液を固まりにくくする「抗血小板剤」「抗凝固剤」「脳血流改善剤」などを病状に応じて使い分けることになります。


脳卒中の予防10項目

  1. まず、高血圧の予防と治療を徹底する。(最も重要)
    130/85〔高齢者は140/90〕以下に。
    減塩食と週3日以上の運動を心がける。
  2. 頚動脈超音波検査プラーク(動脈の壁にできた動脈硬化の塊)の有無を検査する。プラークの一部が剥離して脳梗塞の大きな原因となる。
  3. 心電図で心房細動がないかどうか調べておく。
    心房細動が心臓内で血栓を作り、重症脳梗塞の原因となる。
  4. 全年齢においてただちに禁煙する。喫煙は脳卒中、心筋梗塞、発ガン(肺がん、胃がん、喉頭がんなど)の非常に大きな危険因子であり、殺人者を体内で日々育てているようなものである。また30代以降、皮膚の老化が一気に加速し「喫煙顔貌」といわれるつやの無い老けた顔になる。さらに副流煙には喫煙者以上のタール、二酸化炭素、アンモニアが含まれており、周囲の人の健康に多大な影響を及ぼす。家庭内禁煙を実行すべきである。
  5. 悪玉コレスレロール(LDL)、中性脂肪を正常化する。LDLは動脈硬化を悪化させ脳梗塞の原因となるため、動物性脂肪の摂取を控える。
  6. 糖尿病を予防、治療する。高血糖状態は脳梗塞を引き起こす重要な要素である。
  7. 肥満を解消する。メタボリック症候群は30倍以上の心血管脳疾患発症率である。
    家庭内に甘い飲食物(お菓子、ジュース類)を置かない。買ってこない。間食しない。アルコールを減らす。
  8. 週3回30分以上の運動習慣をつける。
    低塩、低脂肪の食生活を心がける。食卓に塩やしょうゆを置かない。
    揚げ物料理をやめ、緑黄野菜やきのこ類を多く食べる。
  9. 急激に起こる手足の麻痺やしびれなど脳卒中のサインがあったら直ちに専門医に連絡をとる。
  10. 60歳を超えたら毎年定期検診を受け、昨年の状態と常に比較し、現在の状態を知っておく。

脳卒中予防の10か条(穴うめクイズ)

  1. 手始めに 高○○から 治しましょう。
  2. 糖○○ 放っておいたら 悔い残る。
  3. 不整○ 見つかり次第 すぐ受診。
  4. 予防には タ○○をやめる 意志を持て。
  5. ア○○―ル 少しは薬、過ぎれば毒。
  6. 高すぎる ○○○○ロールも 見逃すな
  7. 食事の ○○と○○は 控えめに。
  8. 体力にあった ○○ 続けよう。
  9. 万病の 引き金になる ○○○すぎ。
  10. ○○○、起きたらすぎに 病院へ。

正解:1高血圧 2.糖尿病 3.不整脈 4.タバコ 5.アルコール 6.コレステロール 7.塩分と脂肪 8.運動 9.太り 10.脳卒中


脳卒中危険度診断チェックシートはこちら

『脳神経疾患ビジュアルブック』(株式会社 学研メディカル秀潤社、2009年)