持続性知覚性姿勢誘発性めまい

持続性知覚性姿勢誘発性めまい

このややこしい名前のめまい病は英語の頭文字をとってPPPDと呼ばれていて、4,5年前から注目され始めた病気です。脳神経外科にめまいで受診される方の多くはもちろん脳の病気を心配されているわけですが、実際に脳の病気が見つかることは少なく、メニエール病や頭位変換性めまい症などの耳鼻科的な病気や自律神経性めまい症の方が多くみられます。近年、めまい症の中にPPPDの患者さんが一定数いる事がわかり、日本めまい平衡学会で診断基準も作られました。まだ詳しい原因がわかっていない病気ですが、その特徴をご紹介します。

PPPDの特徴

この病気の診断基準は、ふわふわっとした感じの浮遊感、浮動性のめまい、不安定感が、ほぼ毎日、3か月以上にわたって続いているという病態です。症状は一日中持続するとは限らず増悪期と緩解期があり、立っている時や、動いているものを見た時に誘発されます。心理的ストレスがベースにあることも多いとされています。発作性の回転性めまいとは違い持続時間が長いので日常生活に大きな影響が出ているのが特徴です。

よく見られる「頭位変換性めまい症(BPPV)」は耳石が三半規管内に浮遊してゆき、寝返りなどある特定の頭位で回転性めまいが起こる病気なのですが、このPPPDは頭位に関係なく、普通に立っていて目の前に動くものを見たり、歩いている時に、フワフワするめまいが誘発され一日中続くのが特徴です。後ろを急に振り返るとか、エスカレーターで周りの景色が徐々に変わるような視覚からの刺激でも起こると言われています。しかもこのPPPBは夜より昼間に多く出て持続するので、仕事への支障が大きい、家事ができなくなる、買い物に行けなくなるというやっかいさを抱えているのです。

PPPDの治療

PPPDの治療の二本柱はリハビリとお薬です。PPPDは立っている時に誘発されやすい病気ですので、立っている状態で首を前後左右に振ったり、目を動かしたりしてこの動きやめまい感に体を慣れさせる治療を行います。じっとしていては治らないので、少し荒治療ですが頑張ってもらいます。

内服治療はSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)という抗うつ剤が有効なケースがあると言われています。なぜ抗うつ剤が有効なのか正確にはわかっていませんが、この病気の中には、うつ病の症状が身体に出る「仮面うつ病」の方が一部混じっている可能性があると考えられているのです。徐々に回復していきますが、難治性のケースでは耳鼻科医と臨床心理士とが協働して治療に当たっている施設もあります。

参考資料  
堀井 新 : めまい疾患の診断基準 Equilibrium Research 76,2017
五島 史行(東海大学) : 持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会会報124,2021他

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