脳外科医が思う小顔骨格矯正の謎

脳外科医が思う小顔骨格矯正の謎

長く不思議に思っているけどどうしても理由がわからない事案が人にはいくつかあるのではないでしょうか。私にとってその一つが小顔骨格矯正という仕事がなぜ詐欺罪に問われないのかという謎です。多くのHPでbefore,afterの写真を並べて小顔になったと宣伝していますが、明らかにアプリの仕業。頭部だけでなく全体のスタイルも変わっています。さあ、目の前の机で試してみましょう。その机をどんなに強く触ろうと圧をかけようと机が小さくなることなど絶対ないとみんなわかっているのに、自分の顔や頭蓋骨が小さくなるとなぜ信じられるのでしょうか。

顔が明らかに小さくなりました?頬骨の歪みがなくなりました?施術で首肩の骨格が変わりました?いやいや、ちょっと考えてみたらわかります。脳外科医や整形外科医は術中どれだけ苦労して、頭蓋骨を切って骨を外したり、周囲の組織を切離して関節を取り替えたり、骨を繋いだりしているでしょうか。頭蓋骨を開ける器具はダイヤモンド粒子を用いた医療用ドリルです。地球上で一番硬い金属、ダイヤモンドが選ばれているのです。この高速回転ドリルは頭蓋骨を貫通して脳を包んでいる硬膜に触れた瞬間、安全装置が働いて急停止します。この作業で穴をいくつか開けた後、穴から穴までをクラニオトームという特殊な頭蓋骨用カッターで骨を切っていきます。その際頭蓋骨の断端からは多くの出血が起こりますので、特殊な薬を塗布して止血を行う必要があります。頭蓋骨はとても硬く、切るには大変な労力が必要です。

頭蓋骨や顔面骨が手で触って小さくなるのかならないのか延々と議論している無意味なスレッドを見かける事があります。小さくなる派の意見は、科学ですべてが解明できるわけではない、それぞれの細胞には波動?があり、施術がその波動に影響を与えて頭蓋骨は小さくなる、などという全く不合理な主張です。マッサージで顔のむくみが改善する事は現実に起こり得る現象です。姿勢を正すトレーニングを受ければ左右のバランスが良くなりすっきりとした立ち姿に見えることでしょう。わずかでも可能性があることを否定したりはしません。でも骨だけは不可能です。科学は関係ありません。圧迫による健康被害も報告されています。顔が小さくなりたいという人たちの足元を見て、頭を触るだけで小さくなりますよと嘘をつく仕事はやめてほしいものです。

追記:小顔骨格矯正がなぜ詐欺罪に問われないのかAIに聞いてみました。要点は3点。
施行側が初めからだます意図があると認定しにくい。効果の感じ方に個人差があり、効果があったと勘違いする人が一定数いる。医療行為ではなく民間療法扱いなので規制が甘い。というご返答でした。しかし、最近は消費者庁から景品表示法違反で措置命令を受ける施設が増えているようです。

関連記事

  1. あの日の自分に会いに行く「神経ノスタルジア」

    あの日の自分に会いに行く「神経ノスタルジア」

  2. アリ地獄のギャンブル障害

    アリ地獄のギャンブル障害

  3. 「神経神話」:右脳型人間、左脳型人間の幻想

    「神経神話」:右脳型人間、左脳型人間の幻想

  4. 脳科学から考える「浪費脳」と「貯蓄脳」

    脳科学から考える「浪費脳」と「貯蓄脳」

  5. 味覚の脳科学「おいしいと感じる仕組み」

    味覚の脳科学「おいしいと感じる仕組み」

  6. スマホと学業成績の関係が明らかに

    スマホと学業成績の関係が明らかに

ピックアップ記事
  1. 子供(乳幼児)の頭部打撲:ぶよぶよたんこぶの対処法
  2. 頭部打撲による「外傷性髄液漏」とは
頭痛関連記事
最近の記事 よく読まれている記事
  1. 脳外科医が思う小顔骨格矯正の謎
  2. シニアのためのへそ曲がり食事法
  3. あの日の自分に会いに行く「神経ノスタルジア」
  4. 心配しなくていい物忘れ「ドアウェイ効果」
  5. 福岡頭痛外来ネットワーク市民公開講座を開催:地元の頭痛専門医に相談を
  1. 帯状疱疹と顔面神経麻痺:(ラムゼイハント症候群)
  2. 腋窩多汗症(ワキ汗)のボツリヌス療法
  3. 頭部打撲による「外傷性髄液漏」とは
  4. 子供のスポーツと脳震盪(のうしんとう)
  5. 高齢者の頭部打撲でおこる「慢性硬膜下血腫」について
院長ブログ
アーカイブ
PAGE TOP