「あ、何しに来たんだっけ」とわからなくなり、もう一度元の場所に戻るとパッと思い出す。そんな経験は誰にでもあるのではないでしょうか。別の部屋に行くと用事を忘れる現象は「ドアウェイ効果」と呼ばれ、老化や物忘れの始まりではなく、「正常な脳の働き」と考えられています。心配していた方はご安心を。
「長期記憶」と「作業記憶」のネットワーク
私たちは若いころに習ったり聞いたりした音楽の歌詞を見事に覚えています。イントロだけですらすらと歌えます。これは「長期記憶」として脳の様々な場所に情報が書き込まれて保持されているからです。同じ音楽を何度も何度も聞いていくうちに、神経細胞の結びつき(シナプス結合)が強化され、強固な記憶のネットワークが形成されていくのです。
これと対照的なのが、何かをしに行くときのちょっとした記憶です。これは「作業記憶」と呼ばれ、ちょっとした脳の保管場所に一時的におかれるだけの記憶です。ある場所で考えたこの作業記憶は、その部屋の環境下で覚えたり考えついたものなので、別の部屋に移動して景色や環境が変わると思い出せなくなることがあるのです。これは誰にも起こる正常な反応です。
「忘れる」ことは脳の効率化に必要なプロセス
人間の記憶量には限界があります。ちょっとした記憶は消し去られ、重要な記憶が残される、その効率化のために忘れることは必要なことです。記憶の定着度は年齢よりもその深さと関連があるといわれています。年齢と共に情報処理能力は低下しますが、専門技術、専門知識など深く刻まれた知識は長く維持されます。
ですから昔から村の長老は大尊敬されてきました。生き延びるすべや人間関係の円滑化のために役立つことをたくさん記憶して知っていたので、村の民はこぞって相談に訪れていたのでしょう。膨大なAIの知識は本当にそれを超えることができているのでしょうか。




















