サルコペニア肥満のよもやま話

サルコペニア肥満のよもやま話

最近マスコミで盛んに取り上げられるようになったサルコペニア肥満。私にとっても聞きなれない言葉です。まだはっきりした定義や診断基準のない病態ですので、マスコミ得意の先走りかもしれませんが、日常生活上注意すべき点がいろいろ含まれている事を考えると一度勉強してみるのも面白そうです。

サルコペニアとは?

サルコは筋肉。ペニアは減少。これに肥満が加わってサルコペニア肥満。体重が重くて筋肉が少ない。甘い物を食べるのに動かない。いかにも健康に良くなさそうな雰囲気がありますね。実際にサルコペニア肥満は高血圧や糖尿病にかかりやすく、歩行能力やバランス機能が低下し転倒などを起こしやすいため寝たきりになりやすい病態として注目されています。メタボリック症候群のような高度の肥満でなく、「ちょっと太り気味」程度の人にもおこる病態なので他人事ではありません。

何歳から注意が必要?

若いから大丈夫かというとそうでもないのです。忙しい生活にかまけて運動不足になっている人、食事制限だけで不健康なダイエットをしている人は筋肉量が徐々に減少してサルコペニアになっている可能性があります。バランス良く食べ適度の運動をして普通に健康的な生活をしていれば大丈夫なのですが、それが難しいのが現代社会。サルコペニア肥満は40代から要注意。60代から増え始め70代以上になると約3割に。特に女性に多いという研究結果が出ています。

どんなチェック方法が?

簡単なチェック方法として知られているのは、「椅子から片足で立ちあがれるか」「片足立ちでソックスが履けるか」というテストです。片足で60秒間立てない、駅の階段で必ず手すりが必要になる、歩行速度が遅くなったり歩幅が小さくなるのも危ないサイン。これらはすべて足の筋力が弱ってきた徴候です。立ったり座ったりするたびに思わずよいしょどっこいしょ、これも危険信号かもしれません。

予防対策は?

健康的なダイエットには筋力を鍛える無酸素運動とエネルギーを消費する有酸素運動の組み合わせが大切です。食事制限だけを行うとサルコペニア肥満を作り上げてしまいます。

運動不足と食べ過ぎがサルコペニア肥満の原因なのですから、これを予防するためには生活習慣の改善しかありません。糖分、油分の多い食事を減らし筋肉の元になる蛋白質、アミノ酸を含む食材を意識して摂るようにしましょう。普通の肥満に比べて一旦サルコペニア肥満になると治療は困難になってきます。筋力トレーニングを熱心に行って食事を摂り過ぎれば肥満の改善にはなりませんし、食事を減らして蛋白質摂取が減ると筋力が増強しません。若い人も高齢者もこのような状態にならないよう早めに気づいて解消したいものです。

関連記事

  1. 紫外線から肌と脳を守る

    紫外線から肌と脳を守る

  2. 「子供への虐待による外傷」の特徴を探る

    「子供への虐待による外傷」の特徴を探る

  3. サプリメントとは?見逃せない副作用

    サプリメントとは?見逃せない副作用

  4. 頭痛と生活習慣:スマホを使ったビッグデータ解析

    頭痛と生活習慣:スマホを使ったビッグデータ解析

  5. アメリカの肥満治療事情

    アメリカの肥満治療事情

  6. 早期パーキンソン病の治療

    早期パーキンソン病の治療

ピックアップ記事

  1. 帯状疱疹と顔面神経麻痺:(ラムゼイハント症候群)
  2. スポーツ顔面外傷の注意点
頭痛関連記事
最近の記事 よく読まれている記事
  1. 新しい認知症治療薬「レケンビ(レカネマブ)」Q&A
  2. さまざまな失神
  3. 中高年の理想的なダイエット
  4. 持続性知覚性姿勢誘発性めまい
  5. 鎮痛剤の使い過ぎによる頭痛(頭痛外来でまずは正しい診断を)
  1. 新型コロナウイルス感染の正しい怖がり方
  2. 腋窩多汗症(ワキ汗)のボツリヌス療法
  3. 片頭痛にめまいが合併する「前庭性片頭痛」
  4. 高齢者の頭部打撲でおこる「慢性硬膜下血腫」について
  5. 子供が頭を打った(頭部打撲)時に気をつけること
PAGE TOP