この数年、発売ラッシュとなっていた片頭痛予防薬がほぼ出揃ってきましたので、頭痛外来の現状をお知らせしておこうと思います。
生活に大きな影響を与える片頭痛。その年間経済損失は280億円と試算されています。片頭痛発作が月に2,3回以上ある方は、その前後数日間の体調不良期間を含めると1週間以上影響を受けている事になります。痛みのある日だけではなく、いつ次の頭痛が起こるかわからないという不安や家庭の行事を決めにくいなど、片頭痛に振り回される日々を送っています。片頭痛は痛み止めだけでなく、予防薬こそが大変重宝される病気なのです。
これまでの片頭痛の予防治療は、抗てんかん薬(1)、抗うつ剤(2)、β遮断薬(3)、カルシウム拮抗剤(4)など予防効果がA判定された薬を、いわば「拝借して」利用していたのですが、最近は片頭痛予防のためだけに作られた新薬が大変良い効果をあげています。これらの薬のキーワードはCGRPという物質です。この物質が硬膜、眼窩部、頭部、後頸部等の三叉神経先端から分泌されて血管に結合することが片頭痛の主因だと分かってきたため、これをブロックすることで大きな効果が得られるようになったのです。
まず、抗CGRP注射剤は3種類あり(5),(6),(7)、月に一度、自宅で自己注射することもできますし、苦手な方は病院で打ってもらう事も可能です。3種類の効果はほぼ同等で、多くのケースで片頭痛の頻度や強度を半分以下にしてくれます。1割近くの人では片頭痛をほぼ感じない生活を手に入れることができます。副作用としてはまれに注射部位の発赤やかゆみがみられる程度で、重篤なものは報告されていません。ただし、この注射剤は一方で最近、注射と同じ成分の内服薬が発売され、処方できるようになりました。内服薬ですので月に一度というわけにはいきません。毎日内服するタイプ(8)と一日おきに内服するタイプ(9)との2種類があり、希望に応じて処方しています。飲み薬タイプも注射とほぼ同じ程度の予防効果が得られるので、注射が苦手な方には朗報です。薬は飲み忘れるから注射がいいと思われる方もいますので、治療の選択肢が広がったのはとても良い事だと思います。
この予防治療のネックになっているのは薬価がやや高いことで、注射1本が3割負担で12000円かかります。内服薬も一か月のトータルで同じくらいの価格になります。いろいろなやり方があると思いますが、私はまず3か月間続けてみて満足する結果が得られたらさらに続けましょうと言っています。いつまで続けるかは満足度と経済的負担の兼ね合いで柔軟に決めていけばいいと思います。
(1)デパケン(バルプロ酸)抗てんかん薬





















